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【前編】集団生活が苦手な児童を支援したい【多機能型事業所スピカ様】

2023/01/10

放課後等デイサービス事例インタビュー

【前編】集団生活が苦手な児童を支援したい【多機能型事業所スピカ様】

埼玉県ふじみ野市で放課後等デイサービスを運営する多機能型事業所スピカ様にお話を伺いました。

合同会社Spicaの新田様は、2022年3月に放課後等デイサービス・児童発達支援『多機能型事業所 スピカ』を開所。不登校や引きこもりを支援する珍しい放課後等デイサービスを立ち上げられた経緯やご苦労、今後の目標について詳しくお話を聞くことができました。

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>>【後編】放デイにも特徴があっていい【多機能型事業所スピカ様】

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集団生活が苦手な児童を支援したい

インタビュアー(以下:イ)施設の概要や利用状況などを教えてください。

新田様(以下:新田)合同会社Spica 代表社員 新田哲男です。
2022年の3月に多機能型事業所スピカを開所しました。現在、児童発達支援(以後:児発)の利用者は1名のみで、放課後等デイサービス(以後:放デイ)の特性上、放デイの利用者がほとんどです。

イ)それでは開所するに至った経緯について教えてください。

新田)20年間普通の会社員でしたが、6年前に子供の都合で退職。転職先が児童福祉の世界である放デイでした。そこで初めて、「児童福祉は自分がやりたいことに合致している」と感じるようになりました。

しかし、サラリーマン生活と比べて放デイの業種は素晴らしいと思いつつ、“何かもう一つ足りない”と思うところがありました。

それは就労支援も含め、いろいろなお子様をまとめてお預かりしている。その中で、それぞれの特性に特化した療育ができていないところでした。その中で放デイでの集団生活に馴染めない、つまり集団生活が苦手なお子様が放置されている状況でした。

放デイの療育は、集団生活に馴染み、社会性を身に着けることが目的です。特性的に集団生活が難しい児童に “いずれ慣れる” とか、“集団生活ができないと社会に出ていけない” などの理由で集団生活を強いる放デイの在り方に、「集団生活が苦手な児童を支援したい」と思ったのがきっかけです。

集団生活が苦手な児童にとって、朝から夕方5時までの預かりは拘束時間がすごく長い。その子どもにとって放デイは苦しいし、私はつい、「親は何をし、何を思っているのだろう」と疑問に思ってしまいます。

その中で、拘束時間をなくし、なるべく集団活動・集団生活が苦手なお子様が自由に利用できる、自分の意思で使用ができる放デイを運営したかったのです。

イ)保護者の意思で預けるだけでお子様の意思がない。本当ですね。

新田)放デイは親の意思で預け、子どもの意思が反映されていなかった。特性があるがゆえに理解せずに来る。ただ放デイに居るだけの児童が可哀想だったのです。

不登校児の受け入れは厚生労働省から受け入れを許可されています

イ)不登校児も受け入れられていますね。

新田)不登校児の受け入れは厚生労働省(注1)から受け入れを許可されていますが、ほとんどの放デイで不登校児は受け入れていません。放デイ側が断っています。

その理由は、放デイ側が何もできる事がないからです。また、不登校児とその保護者が見学に来ると、特性がある子どもたちを見て「自分は発達障がいのカテゴリーに入るのだ」と傷ついてしまいます。そして放デイ側も対応方法がわからないので断るしかありません。

実は前職で不登校児を受け入れた経験があります。自傷行為(オーバードーズ)が激しい入退院を繰り返すお子様でした。ご家族が対応しきれないからレスパイト(注2)でいいから放デイを利用したいと言っているのに放デイ側がそれを断っていたのです。それは「おかしいでしょ」と僕のわがままで何とか受け入れました。

結果的に、優しい大人たちの中で自分の存在を認めてもらい、自己肯定感をどんどん高めることができ、最終的には学校に戻ることができました。自傷行為もなくなり、それが成功体験になったと言えますが、実はその子も傷ついていました。“そういう所(放デイ)に通う”ことに。

(注1)厚生労働省

(注2)レスパイト(respite)とは「小休止」「ひと休み」「息抜き」といった意味の英語。介護や養育を担われているご家族が日々の介護や養育に疲れを感じ、力の限界を超え介護不能、養育不能となることなどを予防するための入院をレスパイト入院といいます。

集団活動のない放デイを自分で立ち上げるしかなかった

新田)普通の知能を持った中学生が、放デイの他の知的特性があるお子さまに対する学習支援を同じように受けるわけですから、馬鹿にされた気持ちになります。自分は何のためにここにきているのか。

本人も納得できる学習療育ができる放デイを提供したい。また通所するお子様が傷つかない環境を作りたい。それには満足な学習療育ができ、集団活動のない放デイを自分で立ち上げるしかありませんでした。

そのために、ふじみ野市役所と連携し、不登校児のお子様を預かる専用の放デイを立ち上げたいと県に対して意見書を提出し、認められて立ち上げることができました。

特性に合わせた放デイを利用できる環境が必要

イ)いろいろな特性があり、いろいろな子を支援する施設では不登校児への支援が漏れてしまうわけですね

新田)前職は運動療育メインの施設でした。その施設からこちらに移ったお子様がいます。その子はものすごく手がかかると言われていました。

例えば、みんなで公園に行くとき、その子は公園に行きたくないからとまったく動かない。みんなで外出もできないし、車に乗る時も動かない。そうすると「その子のせいで、みんなは公園に行けなかった。」と、その子のせいにされていました。大人たちからしてみれば、集団行動ができない子扱いになります。

しかし、うちの施設では集団行動を強要されません。その子は勉強がやりたかっただけなんです。療育で取り入れているeラーニングで、触れなかったパソコンも触れるようになり、プログラミング体験もゴールド級です。タイピングもすごく上手です。前の施設では、このようなことができる子とは知らなかったんですよね。

ただ、集団活動ができず、言葉もあまり発しないから気がつかなかっただけで、実際は大きな可能性を持っていて、今は自分から勉強しています。将来は「プログラムの仕事がしたい」「人のためになる仕事がしたい」「例えば、料理を作ったり、人に喜ばれる仕事がしたい」と言うまでになりました。本当に夢を大きく持っています。

このような子が運動系の放デイに行くと、集団活動に参加できないだけで「他の子の足を引っ張っている」と言われることがあることに疑問を感じますね。

イ)本人のやりたいことが尊重されない施設では心理的負担も大きいですね。

新田) やりたくないことのために施設に通わされると心理的負担も大きく、結果、目的と療育が逆転して学校を休みがちになっていました。

学校を休む理由が「学校を休んだら放デイに行かなくてすむ」からですよ。一方、放デイ側は「学校に行けたら放デイに来れるよ」と、放デイをご褒美のように思っていたんですね。しかし、本人はご褒美とは思っていなかったのです。

イ)苦痛だったのですね。

新田) そうです。「学校を休んだら放デイも休める」と思うようになったようです。施設側が施設をご褒美と思ってしまう勘違いが、僕は疑問でした。そこでうちは学校を休んでも利用できることにしました。そうすると、向こうの施設は「そんな施設を作ったら学校をずっと休んでしまうのでは」と心配されました。

しかし、不登校児の保護者様からは、家から出ないことが心配で、学校に行かないならせめて放デイだけでも利用したいと要望があります。

実際にその子は、うちを利用し出してから学校に行くようになりました。保護者様からのお話ですが、「今までごめんなさい。学校に行きます。」と子どもが言ってくれたと聞いています。本人に合わない放デイに行くことが苦痛だったようです。

もちろん運動系の療育も必要です。ただすべての子に当てはまるわけではないことを施設側も認めるべきです。

子どもたちには特性に合わせた放デイを利用できる環境が必要です。一つの施設になんでも受け入れることはない。そのため、うちは落ち着いて過ごすために大きな声を出したり、多動のある子は利用が難しいと伝えています。

お子様も保護者さまも安心して過ごせる場所を目指して

イ)誰もが通えるのは長所にはなりますが、一部には心理的負担にもなると言うことですね。では現在、ほぼ不登校児が多いと言うことでしょうか?

新田) はい、多いです。

イ)それでは、学校に行くはずの時間にも利用していると言うことでしょうか?

新田) はい。午前、午後関係なく利用できることにしていますが、二部制にしています。

午前は9時30分~11時30分、午後は14時~17時30分まで。
来たいときに来ていいし、帰りたいときに帰れます。最低30分はいてもらいますが、本人が望むなら午前、午後の決まった時間までは利用できます。午前、午後の両方は使えません。

利用児童12人を大人4人ではしっかりと見られません。午前、午後定員を6人に分けることで職員4人が集中して手厚く見ています。

イ)来たいときに来られる環境作りと、職員が一人ひとりを見られる体制を作られているということですね。

新田)だから送迎もやっていません。例外もありますが、基本的には親御さんも療育に参加していることを意識して欲しいと思っています。預けっぱなしにしないで、きちんと学校生活や施設の様子を把握して欲しいと思っています。

ペアレントトレーニングも大事にしています。何かしなさいと厳しく言うわけではありません。親御さんが悩んでいることを送迎で来所したついでにお話を聞いたりしています。お子様が療育中、別室で親御さんに「こんな事でお悩みではありませんか?」とコーヒーを飲みながら話を聞きます。

イ)保護者自身のケアもできるわけですね。

新田)お子様も保護者も安心して過ごせる場所を目指しています。不登校のお子様も最初、親御さんが同じ施設内にいることで安心します。慣れてきたら大丈夫ですが。

イ)利用予定日を決めているわけではないのですね。

新田) 基本は利用予定日を契約時に決めなくてはいけないので定員が決まっています。6人以上は入れないので、そこは利用予定者を優先的に入れるようにしています。

不登校児は、その日の気分で休みがちになるので、利用予定日ではない朝に「今日、今から行きたい」と連絡をもらい、空きがあれば受け入れます。

それができるのは、送迎もやらないし、常に職員が4人いるからです。お子様が来たいときが、うちを利用するタイミングです。来たいと思ったときに来てもらいたいと思っています。

情報処理技能検定の試験会場に認定されました

【前編】集団生活が苦手な児童を支援したい【多機能型事業所スピカ様】

イ)パソコン以外に何をやっていますか?

新田) パソコンが使えるようになることを最低限にしていて、天神(注3)と言うソフトのeラーニングを導入しています。

利用者ごとにIDを割り当てているので、自分の名前でログインして、成績も集計しています。最初は国語と算数だけの勉強で、個人の学力レベルに合わせて勉強を設定します。

学校の先生とも相談したのですが、高校進学を目標にした場合、英語は絶対条件になり、その際に全教科利用可能にしました。

親御さんには、基本として国語と算数と、あともう一つは自由に選択できると伝えています。他にもあるので、お子様自身がやりたいこと、長所を伸ばして行く形にしています。理科が好きな子は理科ばかりしていますね。

最初は僕らが設定した課題を5つ(個)くらい取り組んでもらい、それが終わったら自由にしています。
終わったらYouTubeを見てもいいし、マンガを読んでもいいし、ゲームをしてもいい。その中でプログラム体験をする子もいます。

実は最近、情報処理技能検定(注4)の試験会場の認定を受けました。うちでワープロ検定などが取得できます。

障がい児に合わせた試験内容を提案し、資格を取得して将来の就労に活かせるようにしたので、挑戦できることを伝えています。

まだ立ち上げたばかりなので手探り状態ですが12月に情報処理技能検定4級の試験があり、挑戦するお子様がいるので注目しています。
合格できるといいですね。そのときは、僕が試験官として立会います。
(追記2023.1.4:4級に合格されました!おめでとうございます。)

とにかく子どもが興味を持ったら、それを中心に取り組んでいく。とにかく楽しく過ごす。楽しく取り組める勉強があるなら、目標を持って動くことにしています。

また、TOEICを受けたいと言うお子様がいるので試験会場になれるように応募しています。試験会場には「たくさんの人がいるから嫌だ」と言うお子様のためです。

起業して3年以上など要件的に難しいのですが、TOEIC側も障がい福祉に理解をしてくれています。もし認定されたら、子どもたちにTOEICの試験会場を提供できます。

(注3)塾、放課後等デイサービス、学校等のICT教材ならのデジタル学習教材「天神」
(注4)情報処理技能検定

将来ここでアルバイトしたい

イ)子どもたち自身が目標を見つけ、それに向けて挑戦してみようとするのは大きな成長ですし、素晴らしいことですね。

新田)そうですね。そこが一番嬉しいことです。本来、学校に行きたくない子どもたちです。それがうちで勉強をやっているうちに自然に自信を持っていくなかで、“ちょっと学校に行ってみよう”、“中間テストを受けてみたい”、そして“高校に行きたい”と言ってくれる。

一番の最新ニュースは、うちに来ている子が「将来ここでアルバイトしたい」と言ってくれたことです。そこもどうにか叶えてあげたいと思います。

障がい者雇用は大変ですが、雇用保険にも入らないと助成金も得られないですし、20時間以上働かないといけない話だし…と。アルバイトだからどうしよう…と嬉しい悩みです。僕たちも含めて目標が増えている感じです。

イ)不登校から始まり、学校に行かない中で目標を持って行くことは物凄く前進ですね。

新田) 活動は天神がメインの学習療育ですが、子どもたちが何を楽しみにしているかと言うこと、実は大人との会話を楽しみにしています。心に傷を持っている子どもたちが初めて心を開くことができたとき、会話することが一番楽しいようです。

うちにくる理由のいくらかは、人とのコミュニケーションを求めてです。だから僕自身もスタッフに、他の子たちもいるから迷惑にならないように、それでも会話は大事だからしっかりと対応するようにしています。

僕は会話が一番大事なことだと思っているので、子どもが会話をしたい気持ちを汲み取るようにと職員に伝えています。

集団が苦手なお子様に対応する放デイ

イ)人とコミュニケーションを取りたいと思うのも前進ですね。認めて環境を作って、目標ができたときにそれを叶えてあげることが大事ですね。

新田)うちには集団行動はありません。みんなでどこかに行くこともありません。そのような療育活動を希望される親御さんには、別の運動系の放デイを紹介します。

うちはあくまでも集団が苦手なお子様に対応する放デイです。多動で思いっ切り身体を動かしたいお子様は、運動系の療育が適しているとお話させて頂きます。

運動療育は取り入れていないのですが、サッカースクールと提携しています。サッカースクールは障がい児向けのサッカースクールです。運営者自身が障がい児の保護者なので、障がい児に対してとても理解があります。

うちで運動療育はできないけど、週末に運動療育としてサッカースクールと提携していて、割引もありますよとお伝えしています。

国は放デイに対する役割を多く求め過ぎている

イ)運動スクールやサッカースクールの方が適切な居場所になる可能性も高いですね。

新田)少し話は逸れますが、そもそも国は放デイに対する役割を多く求め過ぎています。
「運動も学習も、年齢も小学生から高校生までみなさい。おまけにコミュニケーションもパニックを起こさずにSST (ソーシャルスキル・トレーニング) を取り入れて、すべての療育を行いなさい。」と。

しかし、それは不可能です。だからこそ、それぞれの放デイが、学習、運動など、それぞれ特化し、協力し、全体で子どもたちを支援していくことが一番必要だと思います。

例えば、今は学習ではなく、運動系で身体を動かして、多動が落ち着いてきたら学習系の放デイに。でもやっぱり身体を動かしたいなら運動系に戻ってなどでもいいと思います。すべての福祉が輪になって連携して子どもたちを療育していく必要があるのではないかと思います。

イ)子どもは、その時その時にやりたいことが違うし、課題も違いますしね。その時々に適切な支援があると考えられているわけですね。

>>【後編】放デイにも特徴があっていい【多機能型事業所スピカ様】

さいごに

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