2026/06/23
事例インタビュー
弊社、株式会社ネットアーツが運営する就労継続支援事業所の2施設目として、2026年2月に愛知県西尾市に「ココトモワークス西尾」が開所しました。
現在この事業所は、地域の中学校や遠方の自治体から熱い視線が注がれています。
その理由と利用者への取り組みについて、管理者兼サービス管理責任者(西尾)の丸山さん、サービス管理責任者(犬山)の天野さんから話を聞きました。
――まずは自己紹介と主な業務を伺いました。
丸山さん:以降丸山)コトモワークス西尾で管理者兼サービス管理責任者を務めております。
天野さん:以降天野)天野と申します。現在は支援員として現場のサポートを行っていましたが、6月からはサービス管理責任者として勤務します。
――開所から約3か月半が経過しましたが、ココトモワークスを立ち上げるに至った経緯を伺いました。
丸山)元々、当法人の関連施設として「放課後等デイサービス(以下、放デイ)」が多数展開されていました。
放デイの利用対象は高校生までのため、在籍生徒が卒業しないと下の年代の子どもたちが新たに入りづらくなるという、いわば「押し出し式」の課題が生じていました。
そのため、成長した子どもたちの受け皿となる施設や、その先にある「就労継続支援B型事業所(ワークス)」の必要性を強く感じていたことが背景にあります。
また、放デイの段階から「将来どのような仕事に就くか」という出口を見据え、一貫した支援を行うために本事業所を立ち上げたと聞いています。
――ご家族だけでなく、ご本人にとっても将来の選択肢として非常に重要な場所なのですね。
丸山)その通りです。最近では放デイの利用者に限らず、中学生クラスの早い段階から将来の就労施設を探されているケースが増えています。
学校側の進路計画でも早期の検討が当たり前になっており、この6月にも中学生6名が2日間の職場体験に来る予定です。
――中学生の段階から対応されているのは非常に早いですね。保護者からの問い合わせが多いのでしょうか?
天野)保護者だけでなく、学校側からのアプローチも増えています。特別支援学級に在籍する生徒の「職場体験」として、当事業所のようなB型事業所が選ばれるケースがあります。
通常学級の生徒であれば、中学2年生頃に地域の一般企業へ職場体験に行きますが、特別支援学級の生徒を受け入れられる一般企業はまだ少ないという現状があります。
そのため、中学校の先生から「受け入れ可能な場所はないか」とお問い合わせをいただいたのがきっかけです。
丸山)地域の特性もあるかもしれませんが、一般の職場での受け入れが難しい生徒に対し、B型事業所側でも受け入れ枠が不足しているという話を耳にします。
私たちは常に門戸を開いているため、先生方からの打診にも「ぜひどうぞ」と快く応じています。中学生の受け入れは今回が初めてですが、これまでは高校生の体験を継続的に受け入れてきました。
中学校の先生方も、生徒を特別支援学校の高等部に進めるべきか、普通高校へ進学させるべきかを見極めるため、実際の就労現場をあらかじめ確認しておきたいという意向があるようです。
――職場体験や見学に来られた際には、具体的にどのようなことを行うのですか?
丸山)まず事業所の概要を一通り説明した上で、実際の作業を体験していただきます。
事業所内での試食作り、箱折り、メッセージカード作り、ど冷えもん(自動販売機)商品補充、農業などを体験していただきます。
天野)体験の際は、まず「何に興味があるか」をご本人にヒアリングします。
例えば「箱折り」に興味があれば実際に体験してもらい、難易度を確認しながら「これなら自分にもできる」という自信につなげてもらいます。
食への関心が高い方には、「試食作り」があります。衛生面(帽子・エプロンの着用)を徹底した上で、実際に食材をカットし、シーラー(密封機)で袋留めをするまでの一連の工程を体験していただきます。
丸山)ご本人の興味に合わせて、時間が許す限り複数の作業を体験していただくこともあります。
――1日体験や実際の利用を終えた方からは、どのような反応がありましたか?
丸山)「これなら自分にもできる」「楽しい」というポジティブな手応えを感じる方が多いです。
一方で、箱折りの工程が複雑で、一人では理解できずに戸惑う方もいます。しかし、こちらが「次はこの番号の箇所を折ります」と丁寧にガイドし、最終的に形になると非常に喜ばれます。
自分が作った箱が「お客様のところへ出荷される商品になる」と説明すると、作業の大変さが達成感へと切り替わる様子が直に伝わってきます。
――自分の作業が社会にどう繋がっているか、イメージが持てるのですね。体験前のヒアリングも重視されているのでしょうか?
丸山)はい。事前に学校で得意なことや、何をしている時が一番楽しいかなどを伺っています。
例えば「手芸班で細かい作業が好き」という方にはメッセージカード作りの作業を提案するなど、個人の得意分野と作業をリンクさせています。
――当日のご本人の様子(集中力など)を見ながら作業を調整されるのですか?
丸山)そうです。本人が集中力を切らしたり、手詰まり感を感じたりしている様子を察知した場合は、声をかけて次の工程へ進めたり、その場に応じた適切なサポートを行います。
――現在通われている利用者の方は、どのような経緯で利用に至った方が多いのでしょうか?
丸山)当事業所ができる前に、関連施設であるココトモファーム西尾寺津店で、「愛知県立にしお特別支援学校」の高校2年生の職場体験を受け入れました。
その際、参加した3名が「非常に楽しかった」と感じてくださったこと、そして当事業所には放課後等ディサービスから面識がある職員が在籍しているという安心感から、保護者の方々が「ここを利用する」と決めてくださいました。
――これまでの関わりによる安心感が大きいのですね。前籍機関からの情報収集はどのようにされていますか?
丸山)個人情報の観点から、利用が正式に決定する前での密なやり取りは制限されていますが、契約後にしっかりと情報共有を行います。
グループ内施設であれば、先生方も丁寧に情報を提供してくださいます。
ただ、事前にいただいた情報(学校での様子)と、実際に当事業所に通い始めてからの様子が全く異なるケースが多々あります。
――具体的にはどのような違いがあるのでしょうか。
丸山)例えば、ある利用者のA君の事例があります。
彼は学校の担任の先生や相談員から「将来働くのは難しいのではないか」と言われていた生徒でした。
学校では席につく前に校内を走り回ってしまったり、自傷・他害行為の懸念からハサミを持たせてもらえなかったり、体育の授業で外に出ることすら難しかったりしたそうです。
しかし、当事業所に通い始めてからは、現在では包丁を持って作業をこなしています。
天野)事前情報が多かったため、当初は「苦手な人がいるので、一緒の行動はしない方がいい」「外に出してはいけない」と非常に身構えていました。
しかし、利用2日目頃に「まずは畑に連れて行ってみよう」と試みました。
人数が少ないため目が届きやすいという利点もありましたが、事前に「ルールを守れなければ畑には連れてこられない」と明確に説明した上で同行させたところ、約束を守る事ができ、非常に生き生きと作業に取り組んでくれました。
丸山)試食作りの包丁使用についても、最初は安全面を考慮して外した方が良いのではないかという議論がありましたが、「試しにやってみて、難しそうならすぐに止めよう」という方針で行ったところ、問題なくこなすことができました。
事前情報だけに捉われず、「まずは実際にやってみる」という姿勢が重要だと実感しています。
――環境が「学校」から「働く場(就労支援)」へと変わることで、本人のスイッチが切り替わるのですね。
丸山)はい。慣れ親しんだ環境では甘えが出てしまうこともありますが、新しい環境になり、「お給料をもらう」「これは仕事である」という意識が芽生えることで、異なる一面が見えてきます。
また、A君は「スタッフに見守られたい」「褒められたい」という意欲が強いため、できたことを適切に評価し、自己肯定感を高めることで劇的に変化しました。
先日、相談支援専門員の方が来られた際、「人が変わったようだ」と大変驚かれていました。
私たちは過去の情報を前提としつつも、それに縛られず、現在の本人の成長や「成人した大人である」という自覚を尊重した対応を心がけています。
――利用者の自己肯定感を高め、意欲を引き出すために、スタッフ間で共通して取り組んでいることはありますか?
丸山)適度に褒め、適度に注意することです。過剰に褒めるだけではなく、改善すべき点は理由を含めてしっかりと伝えます。
その際、高圧的に接するのではなく、「なぜそうしたのか」「どう思うか」と本人の意見を聴くようにしています。頭ごなしの否定はせず、提案の形を取るのが基本です。
例えば、移動の際にテンションが上がりすぎてしまう利用者に対しては、出発前に「これはお仕事です。落ち着いて行けますか?」と確認し、本人の意思と切り替えを促すようにしています。
天野)支援の方法は、スタッフのタイプや本人のその日の状態によって何通りあっても良いと考えています。
目指すべきゴール(例:製品を完成させるなど)が共有されていて、工程過程を揃えれば、手法は多様(例:トング二つ使う・一つ使うなど)で構いません。
また伝え方も、あるスタッフの言い方では響かなくても、別のスタッフが伝えると受け入れられることもあります。
多様な関わりの中で、利用者が何かを感じ取り、成長につなげてくれれば良いと考えています。
――メッセージカードの制作において、大きな進化があったそうですね。
天野)元々は、一人の利用者が一枚のカードを最初から最後まで仕上げる手法をとっていました。
しかし、それだと個人のスキルによってクオリティに大きな差が出てしまいます。
そこで、絵を描くのが苦手な人のためにステンシル(型紙)を用いたり、背景だけを塗る方法を試したりと試行錯誤しました。
丸山)どうしても生じてしまう個人差を解決するため、「それぞれの得意分野を活かしてコラボレーション(分業化)してみてはどうか」という発想の転換を行いました。
最初は「自分一人で仕上げたい」というこだわり(職人気質)を持つ利用者がおり、文字も絵も自分でやりたいという最初のインプットを変更することに難色を示していました。
そこで、その方には得意な「文字」だけを書いてもらい、他の利用者が絵を合わせるというプロセスを提案しました。
また、「文字が薄くて鉛筆書きだとお客様が読めなくて悲しむかもしれない」と、お客様視点での説明を丁寧に行いました。
天野)「チーム西尾として、お客様に満足していただける良いカードを仕上げよう」と目的を明確に伝えたところ、本人も納得して受け入れてくれました。
結果として、メンバーそれぞれの強みが組み合わさることでカードの質が格段に向上し、「メッセージカードに命が吹き込まれた」と絶賛されるほどの成果につながりました。
一人で綺麗に仕上げていた利用者自身も、「他者の描いた予想外の構成に対して、自分がどう色付けをすべきか考えるのが新鮮で楽しい」と、表現の幅が広がったことを喜んでくれています。
――お二人は、今年2月の開所前はどのようなお仕事をされていたのですか?
天野)私は昨年8月に入職し、12月頃まで犬山の施設に通勤していました。
当初は放デイ(ジュニア)に配属される予定で研修を受けていましたが、西尾ワークスのオープンに伴い、就労支援に携わることになりました。
前職では介護老人保健施設(老健)で14年間勤務し、その後グループホームでサービス管理責任者をしていました。
対象者が大人であったため、自分の経験を最も活かせるのは就労B型(大人向け)であると考え、現在の業務に邁進しています。
短い間でも放デイと就労支援の両方を見られたことで、子どもたちが高校を卒業して、急に就労環境に移行する際のギャップや、児童期に必要な療育のあり方を客観的に捉えることができたのは大きな強みだと感じています。
丸山)私は元々、看護師として勤務していました。弟が病を患ったことをきっかけに猛勉強し、看護資格を取得した経緯があります。
病院勤務は時に流れ作業になりがちですが、私は一人ひとりと深く向き合う看護がしたいと考え、高齢者施設へ転職しました。
その後、社長が立ち上げた「就労支援を視野に入れた販売事業」の理念に賛同し、入職しました。
看護師資格があることでサービス管理責任者の要件を早期に満たせたこともあり、現在の役職を務めています。
就労支援の仕事は奥が深く、非常にやりがいを感じています。スタッフも利用者もワクワクできる職場づくりを目指しています。
――お二人とも、就労B型の経験がゼロの状態で、これだけの体制を作り上げられたのは素晴らしいですね。
丸山)スタッフ全員がB型事業所の未経験者です。だからこそ、「どうすればより良くなるか」を固定観念に囚われずに柔軟に考えられるのだと思います。
面接や体験に来られた他事業所の経験者からは、「利用者の表情が全く違う」「これほどしっかりと作業に向き合い、活気のあるB型事業所は初めて見た」と驚かれることが多いです。
――利用者とスタッフの距離が近く、自然な笑顔が溢れているのが貴事業所の大きな強みだと感じます。
丸山)私たちが作り笑いではなく、心から楽しんで感情を出しているからこそ、利用者の方々にもそれが伝わっているのだと思います。
天野)利用者の突飛な言動や冗談(虚言癖と捉えられがちなもの)も、否定するのではなくユーモアを持って受け止めることで、周囲の利用者も一緒に笑い合える温かい雰囲気が生まれています。
ただし、仕事の時間(45分間の作業)は「お給料が発生しているプロの時間」としてオンとオフの切り替えを職員にも利用者にも伝えて徹底しています。
――今後、さらに良い支援をするために、どのような場所にしていきたいですか?
天野)法人の「好きなことをやる、好きなことを伸ばす」という方針を大切にしつつ、実際の作業においては「苦手なことへの挑戦や訓練」との見極めを適切に行っていきたいです。
「苦手だからできない」のか「嫌だからやらない」のかを丁寧に見極め、回数を重ねて克服できるものは本人の強みへと変えていきたいと考えています。
もちろん、文字や計算が極度に苦手な利用者に無理な負担を強いることはせず、個々の特性に応じた配慮を行いながら、「できた」という達成感とQOL(生活の質)の向上へ繋げていきます。
丸山)単に「働く場」を提供するだけでなく、利用者が「ここにいて良いのだ」「自分は必要とされている」と思える安心できる居場所を作ることが、結果として就労への意欲を高めると信じています。
また、当事業所を卒業して次のステップへ進みたいと願う利用者に対して、社会のルールや切り替えの重要性を教えるなど、未来へのステップアップを全力で支援できる事業所でありたいと考えています。
社会は決して甘い場所ではありませんが、だからこそ一人ひとりが生きやすい世界を広げていけるよう、チーム一丸となって伴走していきたいです。
――素晴らしいお話をありがとうございました。
弊社が提供している「就労支援HUG」は、就労移行・就労継続支援B型事業所に特化した運営システムです。
支援の予定から記録、国保連請求、工賃明細書発行までをひとつの流れでつなげることで、
転記や確認の手間・ミス・手戻りを減らし、
利用者様の支援に向き合う時間を作り、工賃向上への取組みを後押しします。
就労移行支援・就労継続支援B型事業所の運営にお悩みの方、お気軽にお問い合わせください。
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