放課後等デイサービス業界に
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2026/03/24
就労支援 事例インタビュー
北海道函館市で放課後等デイサービスと就労継続支援B型事業所を運営する株式会社ポラリス様にお話を伺いました。
株式会社ポラリス様は、北海道函館市で放課後等デイサービス・児童発達支援(以下:放デイ)を6事業所と就労継続支援B型事業所(以下:B型)を運営されています。
高齢者向けの訪問マッサージ・福祉用具レンタルからスタートし、障がい児通所支援から就労支援にも事業を展開。「B型だけど、就職に近いB型にしたい」という想いのもと、多様な生産活動と地域とのネットワークを武器に、利用者さん一人ひとりの働く力を育てています。
事業展開の経緯などを代表取締役の中村様からお話を聞くことができました。
▶▶ 株式会社ポラリス
――法人立ち上げの経緯を伺いました。
中村様(以下:中村)株式会社ポラリスとポラリスモアという2つの会社があります。もともとは高齢者向け福祉用具のレンタルと鍼灸マッサージから始まりました。
同級生が訪問マッサージを個人事業でやっていて、「これから伸びそうだ」と感じて一緒に会社を作ろうと誘ったのがきっかけです。
当時の営業先がケアマネージャーだったこともあり、その営業先でできることがないかと考えた時に出てきたのが福祉用具です。
僕が福祉用具を営業すれば、同じ営業先で福祉用具とマッサージの両方の営業が取れるだろうと思い、会社をスタートしました。
僕らが法人をスタートした年に、「児童福祉法」に基づいた放デイ事業が開始
同じ時期ということもあって気になっていて、数年後に僕らも放デイ事業をスタートすることにしました。
正直言うと、最初は「何か自分で事業を立ち上げたい」と思って起業したので、福祉の現場経験も資格も一切なかったんです。
銀行には2つ続けて断られ、公庫で希望額の半分だけ借りて何とか立ち上げました。
当然、経営の経験もないので、資金計画も甘くて「1年でお金が尽きる」ような見積もりでした。
しかし私は営業職から始まり、その後は会計事務所や会社経理など数字を見る側もやってきました。
だからこそ、
「どうせやるなら、ちゃんとしたサービスで“選ばれる会社”にしないと続かない」
という感覚だけは強く持っていました。
立ち上げ当初は「お金になったらいいな」が出発点でしたが、事業をやっていく中で”質やサービスで選ばれるように”とする行動と一緒に、想いが膨らんでいきました。
――2012年に法人を設立し、高齢者支援事業からスタートしたポラリス様は、2016年9月に障がい児通所支援事業を開始されました。
中村)最初の立ち上げの段階で、現在の児童部門の責任者を務めている馬場をスカウトしました。 もともと別の会社で働いていたサッカー仲間に、
「放デイ事業を一緒にやらないか」
と声をかけ、転職してもらって始めたのが児童部門です。
そこから障がい児通所支援をスタートして、ありがたいことに今では児童部門の障がい児通所支援だけで6事業所を運営しています。
1事業所目を開所し、次年度の4月に向けて新規利用のニーズが高かったため、すぐに2事業所目の準備に着手し、翌年4月オープン。
そこからは毎年4月に1つずつ増やすペースで事業所を増やしていきました。
開所当時、他の放デイ事業所をいろいろ見学していく中で、
「自分たちだったらもう少しこうできるんじゃないか」という漠然とした思いが芽生えてきました。
最初のころは参考にしながらやっていたのですが、ニーズや送迎とかは地域によって違うので、地域の需要に応えながら自分たちのスタイルが固まった感じですね。
職員からの意見も聞いて、今も少しずつ形は変わっています。それは大変ですけど、必要なら変わっていかなければいけないと思ってやっています。
――当初は「小学生から高校生まで」幅広い年齢層を一つの事業所で受け入れていました。
中村)私は、「同じ課題でも、声掛けと求めるレベルを変えれば、どの年齢層にも対応できる」と考えていました。
1年生はここまでできたらすごい、高校生ならもう一段階頑張ってみようと声を掛けるイメージです。
ただ、職員側からは、
・発達段階も年齢もバラバラの子どもたちを
・同じ空間で、同じ時間に、同じカリキュラムで見る
ことの難しさが具体的な負担として出てきました。
そこで、中高生に特化した事業所を立ち上げることにしました。
同じ場所で支援したいという理想は一旦脇に置いて、
「年齢に合わせて、もっと踏み込んだアプローチをした方が、利用者さんにとって良い」
と判断した結果です。
就労を立ち上げたのは、この3年後になります。
――「就職に近いB型」を目指す
中村)就労支援をやると決めたとき、正直な本音だけ言えば「A型の方がいいかな」という気持ちはありました。ただ、最低賃金を払うだけの仕事を安定して確保する自信が当時はなかったのも事実です。
ポラリスの放デイからは一般就労や進学をしていく子も多く、そうした進路については、就労移行や一般企業が担ってくれると思いました。一方で、
「すぐに一般就労や進学という選択が難しい場合でも、働く場が必要な人たちの受け皿をつくりたい」
という視点で考えたとき、B型で間口を広げることにしました。
だから「B型だけど、就職に近いB型事業所を目指す」ことを目標に掲げて、始めました。
しかし、現実は甘くありませんでした。
開所から5年で一般就労につながったのは3名ほどです。
当初は、「年1名は一般就労へ」と考えていましたが、そこまでは届いていないのが現状です。
それでも、就職のレベルに近いB型事業所ということで、生産活動の作業種類を絞らないで増やしていきたい。「これがダメでもこれがある」と選択肢がある事業所でありたいと思っています。
――現場が何度も揺れたテーマ
中村)B型を運営する中で、一番の課題だったことは、利用者さんに対して「職員は仕事をメインで見るのか、支援をメインで見るのか」ということでした。
うちの職員は、もともと障害福祉・高齢者分野の支援をしていた人が多いんです。
そうするとどうしても、
・利用者さんのコンディションや気持ち
・面談やメンタルケア
の方に意識が偏りがちになります。
もちろん、それ自体は大事です。
ただ、そればかりに寄ると、今度は「仕事が一向に進まない」「作業能力が上がらない」という別の問題が出てきます。私はずっと、
「仕事も支援も両方やるしかない」
と言い続けていましたが、どこまで行っても言葉だけだと腹落ちしない。
そこであえて一度、現場にこう言いました。
「そこまで“支援が大事”だと感じているなら、一回そっちに振り切ってやってみよう」
結果、職員自身が、
・仕事が進まない
・利用者さんの作業スキルが伸びない
・事業所として売上が立たない
という現実に直面しました。
その体験を経てようやく、
「コンディションを支える支援」と「仕事ができるようになる支援」
両方が必要だと、現場でも実感し理解してくれました。
中村)B型って、感覚的には”小さな会社の集合体”だと思っています。
・職員一人ひとりが「小さな会社の経営者」
・利用者さんがその会社の「従業員」
みたいなイメージです。
ある生産活動の責任者になった職員は、
・仕事を取りに行き
・利用者さんと一緒に作業を回し
・工賃を支払えるだけの売上を出す
というところまで考えなければいけない。と話をしています。
”生産性の感覚”を持ってほしい
うちは「教育」とか「研修」とか、ちゃんと仕組みにしてやってるわけじゃないんです。
でも、職員に少しずつ“浸透させている”ことがあります。それは、「生産性の感覚」です。
職員が中に入ってやる仕事だという前提があります。
「職員がやったら最低賃金くらいは取れる仕事」という気持ちで生産活動の支援に向き合うべきだと思っています。
これはあくまで極端な例え話ですが、 もし「時間とお金がどうつながっているか」という感覚をまったく持たないままだと理屈の上では、
「外でパートやバイトをして、その時間分のお金を持ち寄った方が、収入だけを見れば多くなる」
という考え方にもなってしまいます。
もちろん、そういうことをしたいわけではありません。
だからこそ、事業所の中でやる“仕事”にどんな意味を持たせるのかを、職員と一緒に考えていきたいと思っています。
支援を続けるためにも、時間とお金のつながりから目を逸らしたくない
だから日常の会話の中で、
「この作業って、今の単価だとこのくらいだよね」
「このくらいできるなら、この人はここまでできるよね」
「この時間でこの金額を目指すなら、こう組む方がいいよね」
という話を、ちょっとずつ職員にしています。ほんと“種まき”です。
強く言いたいわけじゃないんです。
そういう話がしんどい人がいるのも分かってるし、疲れる人がいるのも当然だと思っています。
だから、押し付けるんじゃなくて、
「気づいたら意識できるようになっていた」くらいの感じで、少しずつ広げていきたい。
今はそんなスタンスですね。
生産活動の業務量のバランスは難しい
一般の会社には繁忙期などがあり、仕事がないから依頼も無くなるときがあります。そうなると、利用者さんにやってもらう仕事がなくなり職員が困ります。
何もしない時間があるといけないので、仕事の意味や収益だとかを無視した仕事で繋いだ時期もありました。
それが嫌だったので、仕事をたくさん取ると、今度は忙しすぎて回らなくなります。だから調整はとても大変です。
中村)ポラリスのB型では、非常に多様な生産活動に取り組んでいます。
――SDGsに繋がるチョコレートの分別作業
B型立ち上げ準備中、研修会でたまたま隣に座った企業担当者との会話がきっかけで舞い込んだ個包装チョコレートの分別作業という大きな仕事です。
・中身のチョコと外側のフィルムを分別
・チョコは再利用・肥料などへ
・フィルムは別の処理へ
「廃棄予定のものをSDGsの流れできちんと処理したい企業」と「安定した大量の軽作業が欲しい事業所」の利害が一致し、生産活動の安定した収入の柱になっています。
――印刷・プリント・カッティング
・プリント会社からのフルカラープリントの請け負い
・Tシャツなどへの熱転写
・カッティングシートのカットやカス取り作業
といった印刷や加工系の仕事も、年間200万円規模の売上を生み出すメニューに育っています。
――施設外就労
・市から委託されている公園清掃
・金融機関の紹介でつながったホテル清掃
など、外に出て働く仕事も複数持っています。
――野菜を乾燥させて「出汁」をつくる農業連携
最近のチャレンジは、野菜の乾燥出汁づくりです。
・ポラリスグループや契約農家で作った野菜、廃棄予定の有機野菜の仕入れ
・B型事業所でカット→乾燥→ブレンド→パッケージ
この一連の工程を、B型の生産活動として組み込んでいます。
数名で別会社を立ち上げ、製品の販売はその会社が担い、加工をB型が請け負う仕組みです。
今後は、受発注・在庫管理・発送・入金確認まで、可能な範囲をB型で担いたいと考えています。
そうすれば、利用者さんは「製造だけ」ではなく「販売や事務まで含めた仕事の流れ」を経験できます。
いろんな仕事をやっているのは、「攻め」というより「守り」を強くするための側面が大きいです。
「この作業は難しい」となったときに、「じゃあ別の仕事をやってみよう」と言えるかどうか。
選択肢があることで、利用者さんたちの「居場所」を守れる。 そのために仕事の種類を増やしている感覚ですね。
――アセスメント結果から「この人にはこの作業ならできそう」というところで止まり、ハードルを上げるステップが弱かったと中村様は振り返ります。
中村)「支援」発想が強すぎると、
・体調を崩す
・ミスが続く
すると、すぐに「負荷を下げる」「簡単な仕事に戻す」 となりがちです。
それだと、いつまで経っても作業レベルが上がらない。 そこで、新しい仕組みを考えています。
「一つひとつの仕事に、利用者さんの“作業リーダー”をつくる」
例えば一つの作業について、
・手順の理解
・段取り
・他の利用者さんへの指示
まで任せられる人を、マンツーマンで集中的に育てる
職員はあくまで「サポート」に回り、作業そのものの主役を利用者さんにシフトしていく
職員がすべてを管理するのではなく、面談を通して一人ひとりの目標に落とし込み、
「今月は利用者様をリーダー候補として支援していく」
という仕組みにできないかと、職員たちと一緒に考えています。
中村)一般就労につながった3名の事例はいずれも、地域とのネットワークがあったから実現したところが大きいです。
・パチンコ店での清掃・景品交換などを経て、そのまま就職
・ホテル清掃からのステップアップ
・建設業(塗装会社)での就労チャレンジ など
B型をやっていて感じたのは、
「障害者雇用に本気で向き合おうとしている経営者かどうか」
定着できるかどうかを大きく左右するということです。
同友会(注)の活動を通じて、そうした人たちと出会えているのは、本当に有り難いことです。
仕事の依頼も、そのネットワークからいただいたものがいくつもあります。
(注)中村様は、中小企業家同友会のダイバーシティ・インクルージョン委員会の副委員長も務めており、障害や福祉に理解のある経営者層と日常的に接点を持っています。
中村)将来的なイメージとして、農業を軸にした一連の流れをつくりたいと考えています。
・畑での農作業体験を、放デイの子どもたちに提供する
・中高生には、仕事としての農作業を経験してもらう
・B型では、農作業、加工・出汁づくり、受発注・発送までを担う
・将来的には、農作物や出汁や加工品を提供するカフェなどをつくる
「自分たちが育てたものがどう加工され、どう人の口に入るのか」
そこまで一気通貫で見せたいんです。
実際、職員との面談では、
「もし将来カフェをやるなら、そっちで働いてみたい」と話すスタッフも出てきたので、利用者さんだけではなく、職員にとっても新しいキャリアの選択肢になります。
有言実行で少しずつ前に進んでいます。
あと必要なのは、シンプルに「お金がちゃんとついてくる形」にすることだけですね。
――バラバラのExcel管理からの卒業
中村)児童分野では別のシステムを利用していましたが、現場からは「使いづらい」という声が出ていました。
・出席管理と実績が連動しない
・受給者証の有効期限・更新時期を別のExcelで管理
・個別支援計画も別書式で作成。システムには反映されない
結果として、
・支援計画の更新時期を過ぎてしまう
・受給者証更新の漏れが出る
・実績や加算の入力ミスが発生
といったリスクを抱えながら運営していました。
HUGに切り替えた決め手は、「一つのシステムで完結できること」でした。
・出席・実績・請求が連動
・個別支援計画や受給者証の更新状況が一覧で可視化
・「未作成」「更新期限が近い」などが一目でわかる
これにより、今まで忙しさでメモやExcelで「雑になって管理されていた部分」がシステム側で自動的にチェックされるようになりました。
また、本部にいながら、各教室の稼働状況や記録をリアルタイムで確認できます。
・各事業所の売上・利用回数
・誰がどの日に来ているか
・前日あった出来事(業務日報)
を見ながら、現場に連絡を入れたり、ミーティング前の準備に使ったりできるようになりました。
――工賃と稼働率を「見える化」
中村)就労分野では、現在「従来システム+Excel」から「就労HUG」へ移行している最中です。
本音を言うと、「早く全部HUG側に寄せたい」です。
現状は、
・職員の勤怠は紙+印鑑
・工賃はExcelベースで集計し、事務長が確認
・ミスがあれば翌月で調整
という、手間もリスクも高い運用になっています。
工賃は給料です。少なく払うなどのミスは致命的で、あってはならないことです。
・一人ひとりの工賃額と日数
・事業所全体の平均工賃
・次の工賃区分まであと何円か
これらが就労HUGの一画面で確認できると、「見える化」されるので
「今年の平均工賃は、〇万円。あとどれだけ伸ばせるのか」
「この人はこのペースで行くと、どの工賃レベルに到達するのか」
現場レベルで直感的に把握できます。
職員の多くが「工賃がいくらか」「事業所の平均はいくらか」を意識していません。
そこに数字で向き合ってもらうには、”見える化された指標”が必要です。
就労HUGに完全移行できれば、
・工賃計算のミス・漏れの削減
・紙の勤怠管理からの脱却
さらには、児童分野と同じ操作性でシステム管理ができるので、職員の異動のしやすさにもつながり、経営側にも現場側にもメリットが大きいと考えています。
――最後に、これからB型を立ち上げようとしている人へメッセージをいただきました。
中村)福祉からこの世界に入った人が就労支援をやると、”普通の福祉では触れない仕事の世界”に出ていけることが、一番の面白さだと思っています。
農業、加工食品、印刷、カフェ、ホテル清掃 …
どんな仕事を立ち上げても、上手く関連付けられればB型の生産活動にできます。
それは、福祉事業だけをやっていたら味わえないことです。
一般企業がB型をやるケースは「仕事が先にあって、そこに福祉をくっつける」パターンが多いのですが、福祉側から始めると、
「利用者さんのために、仕事の内容を何にでも発展できる面白さがあります。」
その結果、職員にとっても新たなキャリアが生まれていきます。
B型は、うまくやれば”利用者さん・職員・地域の企業、全員にプラスになる構造”をつくれます。
簡単ではないですが、そこに挑戦し続ける価値は十分にあると思っています。
弊社が提供している「就労支援HUG」は、就労移行・就労継続支援B型事業所に特化した運営システムです。
支援の予定から記録、国保連請求、工賃明細書発行までをひとつの流れでつなげることで、
転記や確認の手間・ミス・手戻りを減らし、
利用者様の支援に向き合う時間を作り、工賃向上への取組みを後押しします。
就労移行支援・就労継続支援B型事業所の運営にお悩みの方、お気軽にお問い合わせください。
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