2026/06/04
事例インタビュー
兵庫県三田市を中心に、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援、就労継続支援B型など、多角的な福祉サービスを展開する株式会社オフィス野村様。
会長の野村ひろこ様は、かつて市議会議員として市政から福祉の重要性を説き、自ら現場に立ち、事業所を運営されています。
事業展開の経緯などを会長の野村ひろこ様にお話を伺いました。
前編では、創業の経緯や実践してきた「先駆的な療育」など療育支援について。
この記事(後編)では、就労支援の事業展開の経緯や運営についてお伝えします。
――放デイだけでなく、就労支援まで事業を広げられたのはなぜですか?
野村様:以降野村)放課後等デイサービスに通うお子さんのお母様から、ある時こう聞かれたんです。
「先生、うちにはお兄ちゃんもお姉ちゃんもいて、みんな当たり前のように大学や短大に行きました。でも、この子だけは行ける場所がないんです」
その言葉にハッとしました。確かに、高校を卒業した瞬間に、学びの場や社会への移行期間がぷっつりと途絶えてしまう現実がありました。
そこで私は、2年間じっくり自立に向けて学び、パソコンや社会性などを身につける「カレッジ」という場を独自に作りました。
神戸市にはすでに福祉事業型「専攻科」であるエコール神戸があり、その考え方を参考にしながら、自立支援の場としてカレッジをスタートしました。
そして、その先の「出口」として、学んだことを実際の仕事につなげる場として「就労継続支援B型事業所 ユニバーサルワーキング」を設立しました。
※現在は、就労継続支援B型事業所(以下:B型)の運営を継続されています。
私自身、カレッジという学びの場から就労のB型へつなぐ流れを作る中で、想像していた以上に利用者さんの自信や成長につながっていく姿を見ることができました。
その結果、開所から6年目にはB型の受け入れ人数が満員となりました。
在校生や保護者の皆さまには、感謝の気持ちとともに、希望されるすべての方を受け入れられない現状への申し訳なさも感じています。
それだけ多くの方が、「学び続ける場」「自分らしく成長できる場所」「働くことへの自信につながる場所」を求めておられるのだと、改めて感じています。
「学び」と「働く」をつなぐことは、単に就職先を作ることではなく、一人ひとりの未来の可能性を広げることなのだと思っています。
――ユニバーサルワーキングでは、どのようなお仕事をされているのでしょうか?
野村)ユニバーサルワーキングでは、いわゆる「内職」だけではなく、地域に根ざした付加価値の高い仕事を、営業活動を通して獲得しています。
例えば、神戸電鉄様とのコラボレーションによる企画販売があります。駅で販売される企画切符の封入や管理、精算業務までを一括して任せていただいています。
提携企業のチケット制度を活用した販売であるため、利用者さんと一緒に駅長室へ入り、お金の計算なども行っています。
そのほかにも、県から委託を受けた施設の清掃・管理業務を行っています。その経験を活かし、現在では神戸電鉄の2駅の清掃・管理業務も任せていただいています。
これは、利用者さんが日々丁寧に仕事に取り組み、信頼と実績を積み重ねてきた結果だと思っています。
業務内容は単なる清掃だけではありません。駅周辺の見回りを行い、異常や汚れなどを確認し、報告する施設管理の役割も担っています。
実際に地域へ出て、社会インフラを支える仕事に関わることは、利用者さんの誇りや自尊心につながると感じています。
「自分たちが掃除をしているから駅がきれいなんだ」
そんな自覚を持つことで、利用者さんは本当に大きく変化していきます。
――非常に責任のある、社会に直結したお仕事ですね。営業活動は野村様ご自身で行われたのでしょうか?
野村)はい。B型事業所は、利用者さんの働く場を確保するために、営業力が非常に重要だと感じています。
そのため私は、利用者さんの仕事につなげるため、自ら営業活動を行ってきました。
ありがたいことに、これまで築いてきたご縁や信頼関係から、多くの方にご紹介もいただいています。しかし、それだけに頼るのではなく、自分自身で足を運び、さまざまな提案を行いながら、新しい仕事を生み出してきました。
また、仕事は社会環境に合わせて変化していくものだと思っています。
以前は本格的なカフェも運営していましたが、コロナ禍をきっかけに終了しました。その代わり、新たな仕事や環境づくりへ柔軟に切り替えてきました。
現在は、
・利用者さんや職員の昼食作り
・買い物業務
・3事業所の送迎車の洗車
・エアコン清掃
・パソコン業務
・野菜販売
・お便りの郵送作業
・各種事務作業
など、多種多様な仕事に取り組んでいます。
また、放課後等デイサービス事業所で提供している約30種類のおやつについても、ユニバーサルワーキングの利用者さんに値段付けの作業をしていただいています。
一つひとつの作業にも役割や責任があり、自分たちの仕事が誰かの役に立っているという実感につながっています。
社会は常に変化しています。その変化に合わせて柔軟に決断していくことも必要です。
そして私は、一般就労へつなげるためにも、多種多様な仕事を経験することは非常に大切なことだと実感しています。
――仕事ができるようになるには、大切なことは何でしょうか。
野村)例えば、完成した商品を数える工程の仕事があったとします。
職員が「この人は数が数えられないから無理」と決めつけてしまったら、そこで終わってしまいます。
私は、絶対に諦めません。大切なのは、「何ができないか」ではなく、「どこまでならできるのか」を見極めることです。
しっかり話を聞き、「10までなら数えられる」利用者さんであれば、まず10枚ずつ数えて輪ゴムで1セットにします。
さらに、10セット入る仕切りを用意し、「ここが10個入る場所だよ」「これが10セットで100になるよ」と、視覚的に分かるように工夫します。
すると、その仕切りを埋めていくだけで、誰でも正確に数えられるようになります。
また、10個の束が2つあれば、「20だよね」と確認しながら、「10」が増えていく感覚を少しずつ身につけてもらいます。
これを繰り返していくうちに、以前は難しかった方が、箱や仕切りがなくても10以上の数を正確に数えられるようになりました。
放課後等デイサービスのお便りを三つ折りにする作業でも同じです。
紙を折ることが難しい方には、バインダーに太い線を引いた下敷きを作り、「ここに合わせて折るんだよ」と、分かりやすくスモールステップで伝えます。
このような「工夫」を重ねることで、以前はできなかった方が、今では数を数えることができるようになり、その次のステップとしてチラシを使った箱づくりまでできるようになっています。
これは、私自身とても驚いたことでした。
実は、私はこの箱づくりが少し苦手なんです。継続して取り組んでこなかったこともあり、今でも上手に作れません。
ところが、利用者さんたちは今では簡単に作ってしまいます。本当に感動することが多いです。
「できない」と思っていたことでも、工夫をして継続することで、少しずつできるようになっていく。
利用者さんたち自身が、そのことを日々証明してくれています。
ここは、ただ過ごす場所ではありません。訓練をする場所です。
「継続は力なり」という言葉がありますが、本当に利用者さんたち自身が、そのことを証明してくれています。
だから職員には、「どうしたらできるようになるかを考えてください」と伝えています。
もちろん、その人に合った方法を見極めることは簡単ではありません。
しかし、少しずつ、少しずつ継続していくことで、できることは確実に増えていきます。
「見守ること」は、ただ見ていることではありません。できることを増やしていくために必要な関わり方です。
先回りして全部やってしまうと、その人が何に困っているのか、本当の課題が見えなくなってしまいます。
これは就労継続支援B型でも大きな課題の一つです。
何のためにここへ通っているのか。
一緒に関わりながら、一つひとつ「できること」を増やしていく。それが、本当に大切な支援だと思っています。
――放デイに続き、就労のHUGもご契約ありがとうございました。どのようなタイミングでご検討されたのでしょうか。
野村)就労継続支援B型にちょうど合うシステムがなかったんです。
放課後等デイサービスを始めた当初も、個別支援計画の作成などに非常に困っていました。
当時は、10年前に学校教師を辞めて一緒に放課後等デイサービスを立ち上げた娘が、ユニバーサルスクール独自のシステムを一生懸命作ってくれていました。
個別支援計画の作成だけでなく、送迎管理なども含めて、他のシステムも参考にしながら、現場で使いやすいよう工夫して作ってくれていたんです。
でも、「もっと現場に合うものはないかな」と探していました。実際、システム会社の方が営業に来られたこともありました。
失礼な言い方になるかもしれませんが、放課後等デイサービスを実際に運営されているわけではなかったので、現場で本当に必要な内容とは少し違うと感じ、お断りしたこともありました。
そんな中、数年後に私がたまたま何かでHUGさんを見つけたんです。「これだ」と思い、すぐにHUGさんへ電話をさせていただきました。
その時の対応が本当に誠実で、説明もとても丁寧でした。現場の話もしっかり聞いてくださり、「この会社なら信頼できる」と感じたので、すぐに導入を決めました。
それからは、児童発達支援管理責任者の職員の仕事も非常にスムーズになりました。
保護者の方にも支援内容や状況を分かりやすくお伝えできるようになり、とても喜んでいただいていました。
その後、今度は就労継続支援B型を始めてから、また別の悩みが出てきました。
就労継続支援B型でも、現場にちょうど合うシステムがなかなか見つからず困っていたんです。
そこで以前から、「就労継続支援B型でも、ぜひHUGのシステムを作ってほしい」とお願いしていました。
すると本当にちょうど良いタイミングで、「これから就労支援向けのシステムを始めます」というお話をいただきました。
これは本当に嬉しかったですね。
――他にも検討されていたのですね。
野村)ただ、個別支援計画の管理機能がなかったり、一元管理が難しかったりと、「これだ」と思えるものがなかなかありませんでした。
HUGさんのおかげで、情報がバラバラにならず、一つにまとめて管理できるようになりました。
私は今、就労継続支援B型のサービス管理責任者をしていますが、仕事が非常にスムーズになりました。
利用者さんや保護者の方にも、目標達成度について「終了しました」「一部達成です」とお伝えし、その内容を考察として詳しく説明することで、今後のイメージがしやすくなりました。
「分かりやすくて励みになります」と喜んでいただいています。
また職員にも支援内容を共有しやすくなり、具体的な支援方法が見えることで、実践もしやすくなっています。
本当に、ただただ感謝です。確実に仕事の時短にもつながっています。
就労継続支援B型では、まだシステムを導入せずに頑張っている事業所も多いと思いますので、HUGさんには、これからも頑張っていただきたいですね。
――最後に、野村会長が描くこれからのビジョンを教えてください。
野村)個人的なことになりますが、最近7年かけて一冊の本を書き上げました。
『子どもと大人の心を守る 待つ習慣』です。
▼本の詳細はこちら
これは単なる子育ての本ではありません。
これまで私は2冊の本を出版してきましたが、その内容は主に、お母さん、お父さん、保護者の方々が、どう子育てをしていくかという内容でした。でも私は、ずっと少し違和感を感じていました。
もちろん家庭はとても大切です。でも、子育てを保護者だけで頑張ることには限界があります。子育ては本当に大変なことです。
そして、障がいのあるお子さんを育てておられるご家庭では、日々たくさんの悩みや不安を抱えながら、一生懸命子育てをされています。
兄弟がおられるご家庭もありますし、仕事をしながら毎日時間に追われている方もたくさんおられます。誰もが悩み、迷いながら頑張っていると思います。
だから私は、「子育ては家庭だけで頑張るものではなく、社会全体で支えていくもの」だと思っています。
子どもたちは、一人ひとりがかけがえのない存在です。そして、それぞれが大きな可能性を持っています。
その可能性を育てていくためには、教育と福祉、そして家庭が連携していくことが非常に大切です。
国も「トライアングルプロジェクト」を推進しています。保護者、教育、福祉が連携しながら子どもたちを支えていく考え方です。
私はこの考え方は本当に大切だと思っています。そして、その中心にあるのは、
「お母さんを元気にすること」
「お父さんを元気にすること」
だと思っています。お父さん、お母さんが元気になると、子どもたちも元気になっていくからです。
今、私は保育所等訪問支援にも関わらせていただいています。
以前は私自身も、
「どうして先生は分かってくれないんだろう」と思ったこともありました。
でも、学校へ行かせていただく中で、その考え方は変わっていきました。先生方も本当に一生懸命なんです。
ただ、「どうしたらいいか分からない」と悩んでおられることが非常に多いことを知りました。
ある時、保育所等訪問支援で学校へ行かせていただいた時のことです。
先生が私のところへ来られて、
「先生、助けてほしいです」と声をかけてくださいました。
お話を聞くと、その先生は以前、中学校の教師をされていて、初めて小学校低学年を受け持たれていました。
そして、
「僕は中学校の教師をしていましたが、小学校低学年を持って、どうしていいか全く分からない状態なんです」
「中学校と同じような関わり方をしていたら、クラスがどんどん崩れていってしまったんです」と、とても苦しそうに話してくださいました。
私は、
「休み時間に子どもたちと一緒に遊んでみるのもいいかもしれませんね」とお伝えしました。
すると先生から、
「何をしていいか分からないので、具体的に教えてください」と言われました。
そこで、
「もしよかったら、じゃんけんぽん、あっち向いてホイをしてみたらどうですか」と提案しました。
先生はすぐに、
「やってみます!」と言ってくださいました。実際にやってみると、子どもたちも先生の変わりように驚いたそうです。
でも何より、先生自身がとても楽しかったそうなんです。
そしてクラスは少しずつ楽しい雰囲気に変わっていきました。
しばらくして校長先生から、
「今、学校で怖い先生から人気者の先生になっていますよ」と教えていただきました。私は本当に嬉しかったです。
その後もたくさんの先生方が、
「どうしたらいいか教えてほしい」と相談に来てくださいました。
今の先生方は30人以上の子どもたちを見ながら、本当にハードな毎日を送っておられます。
その中で、一人ひとりに合わせた具体的なコミュニケーションを考えることは簡単ではありません。
だから私は、先生方も元気になることがとても大切だと感じています。その思いが、『待つ習慣』につながっています。
現在は三田市の小中学校へ本の寄贈活動も始めています。
まだ一校ずつですが、校長先生方も熱心に聞いてくださっています。
子どもたちには、失敗を恐れず、たくさん挑戦してほしいと思っています。
「失敗は成功のもと」を実感しながら、自分らしく、自分の可能性を信じて成長してほしいのです。
『待つ習慣』とは、ただ待つことではありません。
子どもの力を信じることです。子どもは失敗を恐れてはいないです。可能性を信頼することです。
大人が少し待ってみること。少し信じてみること。
そして、「大丈夫」と言ってあげることで、子どもたちは必ず元気になります。自己肯定感も育っていきます。
保護者、教育、福祉が一緒になって支え合いながら、子どもたちの未来を育てていく。
そんな社会を、本や講演、そしてこの事業を通して、私はこれからも作っていきたいと思っています。
弊社が提供している「就労支援HUG」は、就労移行・就労継続支援B型事業所に特化した運営システムです。
支援の予定から記録、国保連請求、工賃明細書発行までをひとつの流れでつなげることで、
転記や確認の手間・ミス・手戻りを減らし、
利用者様の支援に向き合う時間を作り、工賃向上への取組みを後押しします。
就労移行支援・就労継続支援B型事業所の運営にお悩みの方、お気軽にお問い合わせください。
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